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法律事務所でも法務SaaSでもない。「Alternative Legal Services」とは?
Alternative Legal ServicesとALSPの基本、海外の代表例、日本の類似サービス、活用場面を整理します。
LegalTech Media編集部
編集部

企業の法務業務が増えたとき、一般的には「法務担当者を採用する」「法律事務所へ依頼する」「法務SaaSを導入する」といった対応が考えられます。
しかし、法務人材はすぐに採用できるとは限りません。大量の定型業務を法律事務所に依頼すると費用がかさみますし、SaaSを導入しても、実際に業務を処理する人は必要です。
こうした課題に対する、もう一つの選択肢として海外で成長しているのが、Alternative Legal Servicesです。
Alternative Legal Servicesとは
Alternative Legal Servicesとは、従来は法律事務所や企業の法務部門が行っていた業務を、従来とは異なる方法で提供する法務・法務支援サービスです。
これを提供する事業者は、ALSP(Alternative Legal Services Provider)と呼ばれます。
Legaltech Hubでは、ALSPについて、「テクノロジー、業務プロセス、プロジェクト管理、人材配置などを活用し、法律事務所とは異なるコスト構造でサービスを提供する事業者と説明しています。初期にはeDiscoveryなどの文書関連業務が中心でしたが、現在ではNDAの交渉を含む契約業務などにも対象が広がっています。[1]
法律事務所が主に高度な法的判断や代理業務を提供し、法務SaaSが業務用のツールを提供するのに対し、ALSPは、人材・業務設計・テクノロジーを組み合わせ、法務業務の実行まで担う点に特徴があります。
Thomson Reutersの調査では、ALSP市場は2023年時点で推計285億ドルに達し、2021年から2023年まで年平均18%で成長したとされています。[2]
どのようなサービスがあるのか
ALSPのサービスは、大きく次のように分けられます。
法務人材の提供
必要な期間や業務量に応じて、弁護士や法務経験者を企業に配置します。法務担当者の退職、育休、採用難などによって、一時的に人材が不足している場合に利用されます。
法務業務の継続的な受託
契約書レビュー、契約管理、コンプライアンス対応、法人管理など、繰り返し発生する法務業務を継続的に引き受けます。
単に人を派遣するだけでなく、業務フローの設計や標準化、システムの導入まで行うこともあります。
特定案件の支援
M&Aにおけるデューデリジェンス、訴訟時の文書レビュー、eDiscovery、情報漏えい調査など、一時的に大量の処理が必要になる案件を支援します。
海外の代表的なALSP
代表例の一つが、Axiomです。
Axiomは、企業の法務部門に対し、必要な期間だけ弁護士や法務人材を提供しています。フルタイムの出向だけでなく、パートタイムや案件単位での利用にも対応しています。[3]
Elevateは、自らを「Law Company」と位置付け、法務コンサルティング、法務人材、リーガルソフトウェア、法務オペレーションなどを組み合わせて提供しています。[4]
UnitedLexは、契約業務、訴訟・調査、知的財産、リーガルオペレーションなどを対象に、データやテクノロジーを活用した法務サービスを提供しています。[5]
このほか、Legaltech Hubには、Factor、Cognia、Epiqなどの事業者も掲載されています。[1]
どのようなときに利用するのか
ALSPが向いているのは、例えば次のような場面です。
- 契約書やNDAの処理件数が急増している
- 法務人材を採用したいが、採用まで時間がかかる
- M&Aや訴訟により、一時的に大量の文書確認が必要になった
- 定型業務に追われ、法務担当者が重要案件に集中できない
- 法務業務の進め方を標準化・効率化したい
- 法律事務所と社内法務の間を担うリソースが必要になった
一方で、経営上重要な法的判断や、個別性・リスクの高い案件については、法律事務所や社内の法務責任者が中心となるべきでしょう。
すべてをALSPに任せるのではなく、高度な判断は法律事務所、社内事情を踏まえた判断は法務部門、大量・定型的な業務の運用はALSPというように、役割を分担することが重要です。
日本の類似サービス
日本でも、ALSPに近いサービスが登場しています。
例えば、クラウドリーガルは、自らを企業法務アウトソース・サービスであるALSPと位置付けています。生成AIと専門家を組み合わせ、契約書の作成・レビューなどの法務業務をオンラインで提供しています。[6]
また、EY Japanは「リーガル・マネージド・サービス」として、契約締結、規制コンプライアンス、組織ガバナンスなどの法務業務を支援しています。[7]
日本では「ALSP」という言葉だけでなく、「企業法務アウトソーシング」「リーガル・マネージド・サービス」「法務BPaaS」などの名称で、類似するサービスが提供されています。
なお、契約書レビューや契約管理を支援する法務SaaSは、ALSPと隣接する存在ですが、原則としては別のカテゴリーです。
法務SaaSは業務を行うための「道具」を提供するのに対し、ALSPは人や業務プロセスを含めて、業務の「実行」を提供するためです。
まとめ
ALSPは、弁護士を単に安く代替するサービスではありません。
法務業務を分解・標準化し、人材、テクノロジー、業務プロセスを組み合わせて運用する仕組みです。
企業の法務課題が複雑になるなかで、今後は「社内で行うか、法律事務所に依頼するか」という二択ではなく、業務の性質に応じてALSPや法務SaaSを組み合わせる考え方が、日本でも広がっていくのではないでしょうか。
参考資料
[1]Legaltech Hub「Alternative Legal Services」
[2]Thomson Reuters Institute「Alternative Legal Services Providers 2025」
[3]Axiom 公式サイト
[4]Elevate 公式サイト
[5]UnitedLex 公式サイト
[6]クラウドリーガル公式サイト
[7]EY Japan「マネージドサービス」
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